先日母から、「来年はお父さんの7回忌だからね」と連絡がきた。
法事が行われる命日は土曜日にあたるため、
仕事が休めるよう事前に段取りしておいてね、という意味だろう。
父は私の39歳の誕生日翌日に亡くなった。
もうそんなに経つんだ。
私は父が39歳、母が36歳の時に産まれました。
9歳上に兄がいます。
昔は厳しかった母に比べ、父はとても優しく
怒られた記憶もほとんどありません。
務めていた大手の会社から同僚と二人で独立し、
会社を立ち上げた父は専務という立場でした。
何不自由なく好きなことをさせてもらい、大事に育ててくれました。
年頃の反抗期はありましたが、私は父が好きでした。
そんな父の様子がおかしくなったのは、
私が26、27歳頃だったと思います。
会社から戻ると父は「仕事でボーっとして以前では考えられないようなミスをした」と
愚痴をこぼすことが増えていきました。
自分でもどうしてあんなミスをしたのか分からないと言って
おかしいな、おかしいな、と繰り返していました。
会社には私のいとこも居たのですが、
「おじさん、ちょっとおかしいよ」と言われました。
この時はまだ、加齢による物忘れだろうと深刻には考えませんでした。
ある時母が一泊の旅行に出かけました。
父と一緒に母を見送り、その晩のこと。
私が自室で寝ていたらドアがノックされ、父が顔を出して言いました。
「お母さんは?」
衝撃でした。
「お母さん旅行行くって出かけたじゃん、明日にならないと帰らないよ」と
強い口調で返しました。
父は少しの沈黙の後、「ああ、そうだったか」と戻っていきました。
思い出したのか、忘れたことを悟られたくなくて取り繕ったのかは分かりません。
仕事でミスが増えたうんぬんの前触れがなければ、
寝ぼけていただけだと思ったかもしれません。
母が帰ってから昨晩のことを話しました。
いよいよおかしいから、と脳神経外科を受診しました。
告げられた病名は「若年性アルツハイマー」
どうしてお父さんが?まだ60代だよ。